【完】復讐の元姫
誕生日でも、結婚記念日でもないのに。
着替えて戻ってきた麗は私の手元を見て、「気づいたか」と小さく微笑む。
そんな彼にぎゅうっと抱きつくと、そっと抱きしめ返してくれた。
「私、誕生日でもなんでもないのに……」
「ん、しってる」
「じゃあ、どうして……」
「俺が汐乃を好きだから、いつもさみしい思いさせてる分、笑わせてやりたいんだよ」
じわ、と視界がにじむ。
……こんなの、ずるい。ずるすぎる。
「汐乃」
名前を呼ばれて顔を上げると、優しく麗は微笑んでくれた。
「特別な日じゃなかったら、プレゼントを贈るのはダメだ、なんて法律はないだろ?
それに、いつもは俺が選んでるけど、それは汐乃がほしいって言ってたものだからな」
「……あ、」
思い出した。
前に、麗とデートした時、このシュシュを気に入ったのだけれど、急な用事が入ってしまったために、その時は買うのをあきらめた。
後日また行こうと思っていたのだけれど、それはすっかり忘れていて。