二人乗り-恋の温度-
新しい教室に行くともう数組のグループが固まっていた。

知らない顔の子も多い。

「うー…緊張するぅ…」

緊張でお腹が痛くなってきた…

「もー元気だしてよー。私がいるでしょー」

「そうだけど…」

私は自分が嫌いだ。

度の強い眼鏡をかけて、美春といるとき以外はずっと本を読んでる。

極度の人見知りで、自分から声をかけるなんて絶対にできない。

読書は好きだからいいんだけれど、やっぱり周りから見たら「なにこの暗いやつ」な訳で…心を許せる友達は美春とあともう一人しかいない。

「おいおい、新学期そうそうどうしたんだ歌音?美春になんかされたか?」

「ちょっと!私が歌音になんかしたっていうの?」

「もしかして…無自覚…?」

「あんたねぇ…」

この美春をいじってる男子がそのもう一人、水沢蓮。

蓮とも幼稚園からの付き合い。

まぁ私たち三人は、世に言う腐れ縁なのだ。

「ガラガラガラ…」

美春と蓮がそんなやりとりを続けていると、担任が教室に入ってきた。

それから数分のSHRで、この後の式の開始時間、明日の時間割などの話を簡単に説明され、生徒は体育館へと移動になった。


「なぁ、歌音」

校長先生の長い長いお話の途中、隣に並んでいる蓮が私の肩を叩いた。

「なに?」

先生達にバレないように、私は静かに蓮の方を向いた。

「さっき職員室の前通った時に、先生達が話してたんだけど、この後転入生の紹介あるらしいぜ」

「そうなの?どんな人なんだろう」

「な、早く紹介しねーかな。校長の話いい加減長いんだけど…」

蓮は思い切り嫌そうな顔をする。


ようやく校長先生の話が終わると、一人の先生が前に出てきた。

「えー、これから転入生の紹介をしたいと思います。神崎くん、前へ出てきて下さい。」

先生がそういうと、男子生徒が壇上に上がってきた。

身長が高く、顔がすごく小さい。何頭身だろうと思うくらい。

顔は目鼻立ちがはっきりしていて、形の良い唇が結ばれている。

「神崎駿です。たいした挨拶は出来ませんが、これから仲良くして下さい。以上で。」

そういってニコッと笑った顔は、さっきの涼しげなものとはまた違う優しい雰囲気を醸し出していた。

「「あの人かっこいいね」」

所々から女子生徒の声が聞こえる。

やはり、あの人はイケメンなんだ。私が思うに、その中でもトップレベルに位置するのではないか…

隣では蓮が「なんだぁ、男かよ」と、また嫌な顔をしていた。

「神崎くんは今日から2年B組になります。ではこれで紹介を終わりにします。」

2年B組…隣のクラスだ。


それから数分で式は終わり、生徒は教室に戻され、15分間の自由時間となった。

「神崎って人、なかなかのイケメンじゃない?」

席に戻ると、前の席の美春が私の方に体を向けた。

「そうだね、アイドルオーラ出てた。」

二人で話していると、数人の女子が隣のクラスに行こうとしている。

廊下を覗くと、どうやらうちのクラスの女子だけじゃないみたいだ。

「みんな行動が早いなぁ…私たちもいく?」

美春は呆れた顔をしながらも、興味があるみたいだ。

「私はいいや。あんまり興味ないし、美春だけで行ってきてー」

私は美春に行ってきなという風に手を振った。

「帰ってきたら、色々と教えてあげる」

ニヤッと笑うと、美春は走っていった。

私はスクールバッグから読み途中の本を取り出した。

「あの人、どんな人なんだろう…」



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