あべこべ恋愛事情
長い長い、学年集会が始まる。出席番号順の為俺は真ん中辺り。少し列から顔を出し、前の方を見ると前から2番目の華の姿が見えた。めんどくさそうだが一応校長の話は聞いているらしい。

校長の次はなぜ必要なのかわからない生徒会長の話。これまた長い。これからの学校生活がどうのこうのと話しているが、校長ということが大して変わらず聞くのも飽きてくる。

そして華にとっては待ちに待った表彰伝達。帆川先輩の表彰だ。

今回は陸上部とサッカー部のみの表彰。陸上部の帆川先輩の名前を呼ばれると女子が一気にざわめく。あちらこちらから黄色い声。キャーキャーと少しうるさい位だ。毎度の事の為、今更先生方も注意はしないし、むしろ先輩は誇らしげで先生もいい生徒を持ったと、嬉しそうである。陸上部の表彰を終え次はサッカー部。部長の先輩が登壇し賞状を受け取る。ここでもまた女子からの黄色い声が。うちの高校のアイドルの様なものだから仕方ないのだが、どうも慣れない。もう少し静かにはならないのだろうか。

2つの部活の表彰を終え、3年生から順に教室へ戻って行く。教室へ戻っていく。

教室に戻ると隣の席にすわった華の第一声が「惚れ直した!」だった。

「いきなりどうしたんだよ?」

と、毎度お決まりのセリフを返す俺。

「やーもー!!先輩かっこよすぎでしょ!惚れ直すわ!!あの、爽やかな笑顔!こっちの声に応えてくれるし、かっこよすぎだってば、もう!やばいわ!!」

興奮気味の華を抑えながら話を聞く。華だけでなく他のクラスメイトも皆同様に盛り上がってある様子だ。朝礼に限らず、人気度の高い先輩達と何かあると大抵クラスの雰囲気はこうなる。

この雰囲気で困るのが男子なのだ。「私達のクラスの男子もあれ位カッコよければなー」などと始まり男子に対する不満暴露大会が開催される。学校として男女共にレベルが低いわけではない。むしろ高い位だと思うが、その中でもまた良い人達が居るので比べられてしまう男子は可哀想に見えてくる。

俺は男子にも女子にも属さない中間なグレーの存在の為、基本的にこの大会の参加者とはならずに済んでいる。

華も毎度のお馴染み先輩を褒め称え、クラスの男子を憐れみる大会に参加し始めたので俺はそれを聞きながら授業の準備をすることにした。

そこで、机の中に一通の手紙が入っている事に気づく。いつの間にいれたのだろう。朝来て教室移動までの間にこの席を動いては居ない。となると、入れられたのは体育館に行っている間になるが、その時は全員参加のはずだし教室には鍵がかかっていたはずだ・・・。不思議に思いながら封筒の宛名を確認する。間違いなく俺宛てであるが、肝心な差出人の名前が書いていない。華は他の女子との話に夢中なので、バレ無い様にこっそりと中身を読む事にした。バレたら教室に忍び込んで入れられた様な手紙を出す相手なんて危ない!などと言われそうだったから。

“お手紙で失礼します。羽間さんに大事なお話があります。昼休み、校舎裏のブナの木の前に来てくれませんか?昼休みのチャイムが鳴ったらそこで待っているので来て下さい。”

薄いピンク色をした花柄の封筒に入った同じ花柄の模様の便箋には、可愛らしい丁寧な字でシンプルにそう書いてあった。

昼休み・・・4時間目は移動教室では無いからご飯を食べ終わったら行くか。と思い手紙はそっとバックにしまった。
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