しろっぷ
 なんでこんな最低なやつと・・・・・。

 そう思いながらも貴人の唇の体温の暖かさと貴人のつけていた香水も合わさって視覚・嗅覚・触覚は支配され、耳元の囁きに聴覚も支配。
 そして、貴人は一度唇を離し、親指で下唇を少し下げると今度は二つの舌を絡ませ、味覚をも支配。

 あっ・・・・・。

 今ゆかりに出来ることは早く終わることを祈るだけだが、同時に永遠に続いてほしいという自分もいた。
 と、貴人は唇を離し、抱きしめた力を緩めたが、ゆかりはすぐに貴人から離れられなかった。
「予定通りだな」
「・・・え?」
「本当はオレから抱きしめる予定だったが、まさかそっちから求めてくるとは」
「そ、そんなこと・・・」
「その割りには抵抗しなかったな。感じたのか?」

 違うもん・・・絶対、絶対に違うもん。

 そう自分自身に言い聞かせるが、その自信はすぐに揺らぎ、何度言い聞かせても無駄だった。
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