しろっぷ
「早く仕事に戻るぞ」
 その後、貴人はいつも通り『アレ』だけの指示の仕事を始め、ゆかりは渋々ながら手伝うのであった。


 ようやく仕事が終了し、ゆかりは一目散に社長室を後にしようとしたが、貴人に呼び止められた。
「誰が帰っていいと言った?」
「もう仕事は終わりましたよ。それに今日は人に会う約束があるんで」
「彼氏か?」
「まあそんなとこ・・・」
「ウソだな。顔にウソって出てるぞ」
 と言われて社長室にあったガラスを鏡代わりに覗きこむが、もちろん顔には何にもない。
「何にも書いてないですよ」
「当たり前だろう。そんなこと信じるバカは初めて見た」
「・・・帰ります!!」
「だから誰が帰っていいと言った?」
「もう何なんですか?要件なら早く言ってください」
「今から付き合え」
「あんなことしておいてよく言えますね?」
「まだあれくらいのことで怒っているのか?」
 呆れた声を出した貴人は鼻で笑った。
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