しろっぷ
 するとデスクに正志がいて、右手には今朝貸したボールペンを振りながらに持っている。
「おかえりなさい」
「美里本舗の人みたい」
「え?」
「何でもない。それよりどうしたの?」
「仕事が終わったんでペンを返しに」
「そうなんだ。机に置いて帰ってくれてよかったのに」
「あ、あのよかったらこの後・・・」
 突然モジモジし出した始めた正志。
 普段ならそのような行為など気にも止めらないが、急いでいる今は違った。
 タンタンタンタンタン。
 ゆかりは何度も足音を立て、早く要件を聞こうとするが、正志はなかなか言葉が出ない。
「悪いんだけど、近藤社長を待たしているから早くして」
「社長をですか?」
「社長は時間に厳しい人だからまた何か言われるでしょう。早くして!」
「えっと・・・」
「もうー。用ならまた今度聞くから行くね」
 埒が明かないと判断したゆかりはそう言い放ち、デスクにある荷物を取ってさっさとビルの下へ。
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