しろっぷ
 品定めしている貴人はゆかりの方を向いた。
「わ、私、秘書をまだやるとは」
「社長命令だ!!」
「い、いくら社長でも横暴ですよ!」
 高級感溢れるこの店に似合わない大きな声をしてしまったゆかり。
 支配人の仲村はそれを見て驚愕した様子をだったが、店の雰囲気を壊さぬよう聞かないフリ。
「おいゆかり、何が不満だ?」
「不満とかはないですが・・・」
「何だ?ハッキリしないとオレにはわからん」
「ハッキリしろって言われても・・・」
「そこがわからんとオレも対応できん」
「あ、あの・・・よろしければお茶とお菓子でもどうですか?」
 いつの間にか仲村はコーヒーと紅茶をお盆に乗せて持っていた。
「悪い。ゆかり、お前ももらったどうだ?」
「え、あ、はい・・・いただきます」
 ゆかりは紅茶を取り、貴人はコーヒーを取って一息つく。
「なかなかのコーヒーだ」
 貴人はそのコーヒーの匂いを堪能し、自分の世界へ。
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