しろっぷ
 社長・・・・・社長!
 だが、ゆかりがいくら呼びかけても貴人はコーヒーに夢中で話に応じない。
「もうこの人は〜」
「あ、あの・・・橘様」
 お盆をどこかに左の脇に抱えた仲村は優しく近づく。
「は、はい!?」
「良かったら試着だけでもされてみませんか?」
「で、でも私こういうのは普段縁がないと言いますか」
「当店の品物にご不満な点がございましたか?」
「ご不満なことなんて」
 慌てて弁解するゆかり。
 正直言うとゆかりはこの商品を端から端まで試着はしたいし、テレビで見たことある高級宝石は欲しい。
 しかし、あまりにもの幸福な展開にこの先一生不幸が訪れるように思えていた。
「ゆかり、試着くらいしろ。その格好のゆかりは浮いてるぞ」
 自分の世界から戻って来た貴人はその後コーヒーを一口。
 ・・・・・仕方ない。もう何でもこい!?
 ゆかりは覚悟(?)を決め、服の試着を開始したのであった。
< 72 / 306 >

この作品をシェア

pagetop