時空(とき)の彼方で
ここはどこ?
「暑い・・・」
外に出た途端、容赦のない夏の陽射しが彼女の肌を刺してきた。
白い肌を保つためにUVケアはもちろん、半袖ブラウスの上からはきちんと長袖のパーカーを羽織り、手袋と日傘で身を守る。
彼女の名は成瀬理沙。
今年10月で23歳になる。
職業、アパレルショップ店員。
今日は遅番なので、昼食を済ませてからの出勤だ。
その分、太陽の位置も高く、陽射しの強さも半端ではなかった。
「暑い・・・」
出てくるのはその言葉だけ。
遅くまで寝ていたので、食事もあまり取らずに家を出た。
歩く人もまばらで、アスファルトには陽炎まで立ちのぼっている。
彼女は、自宅から歩いて15分ほどの所にあるバス停に向かっていた。
いつもそこからバスで通勤している。
乗り込んでしまえばクーラーの効いた快適空間での移動。
バスを降りてからも、1分もかからずに職場があるビルに入る事が出来る。
店は、その商業施設の2階にあった。
夏の暑さを味わうのは、家を出てからバス停に向かう最初の15分と言ってもいいくらいだ。
それなのに、この大げさ過ぎるほどの防御。
高校の時までUVケアにはまったくと言っていいほど無頓着で、こんがり焼けた肌、鼻から頬にかけてはソバカスだらけ、髪も痛み放題だった。
ところが、その容姿のせいで、大好きだった男の子に振られたのがトラウマになっていた。
それからというもの、極力肌を出さない生活を続け、今では白い肌を手に入れた。
人間、努力次第で変われるものである。
それにしても、今日の暑さは尋常ではない。
湿度も高いようで、いつも以上に額と首筋に汗がにじみ出て来る。
坂道を下り、大通りへ出ようとした時だった。
彼女は前方からの熱気を帯びた風を受け、足元がゆらつき全身から力が抜けていくのを感じた。
倒れる・・・
そう思いながら瞳を閉じたが、誰かに体を支えられる感覚。
そっと目を開けると、すぐそばに見知らぬ男の顔があった。
「大丈夫?」
「・・・ありがとうございます」
「ちょっとそこのカフェで体を冷やそう」
「すみません」
彼女は、その男に支えられたまま、すぐ近くのカフェに入った。
店内に入ると、さきほどの熱気が嘘だったかのように、冷たい空気が彼女を心地良く包んでくれた。
外に出た途端、容赦のない夏の陽射しが彼女の肌を刺してきた。
白い肌を保つためにUVケアはもちろん、半袖ブラウスの上からはきちんと長袖のパーカーを羽織り、手袋と日傘で身を守る。
彼女の名は成瀬理沙。
今年10月で23歳になる。
職業、アパレルショップ店員。
今日は遅番なので、昼食を済ませてからの出勤だ。
その分、太陽の位置も高く、陽射しの強さも半端ではなかった。
「暑い・・・」
出てくるのはその言葉だけ。
遅くまで寝ていたので、食事もあまり取らずに家を出た。
歩く人もまばらで、アスファルトには陽炎まで立ちのぼっている。
彼女は、自宅から歩いて15分ほどの所にあるバス停に向かっていた。
いつもそこからバスで通勤している。
乗り込んでしまえばクーラーの効いた快適空間での移動。
バスを降りてからも、1分もかからずに職場があるビルに入る事が出来る。
店は、その商業施設の2階にあった。
夏の暑さを味わうのは、家を出てからバス停に向かう最初の15分と言ってもいいくらいだ。
それなのに、この大げさ過ぎるほどの防御。
高校の時までUVケアにはまったくと言っていいほど無頓着で、こんがり焼けた肌、鼻から頬にかけてはソバカスだらけ、髪も痛み放題だった。
ところが、その容姿のせいで、大好きだった男の子に振られたのがトラウマになっていた。
それからというもの、極力肌を出さない生活を続け、今では白い肌を手に入れた。
人間、努力次第で変われるものである。
それにしても、今日の暑さは尋常ではない。
湿度も高いようで、いつも以上に額と首筋に汗がにじみ出て来る。
坂道を下り、大通りへ出ようとした時だった。
彼女は前方からの熱気を帯びた風を受け、足元がゆらつき全身から力が抜けていくのを感じた。
倒れる・・・
そう思いながら瞳を閉じたが、誰かに体を支えられる感覚。
そっと目を開けると、すぐそばに見知らぬ男の顔があった。
「大丈夫?」
「・・・ありがとうございます」
「ちょっとそこのカフェで体を冷やそう」
「すみません」
彼女は、その男に支えられたまま、すぐ近くのカフェに入った。
店内に入ると、さきほどの熱気が嘘だったかのように、冷たい空気が彼女を心地良く包んでくれた。