時空(とき)の彼方で
コンビニから戻った彼女は、買って来たタマゴサンドとコーヒーで朝食を済ませると、店長が買ってくれたスマホの電源を入れた。
使い方はよくわからなかったが、画面にある『連絡先』というアイコンをタップすると、岩清水の携帯、自宅の番号が入れてあった。
あとはまったくの白紙状態で、何だか心細かった。
店長の番号が10年経った今でも変わっていなかった事が救いだった。
そうでなければ、どれだけの孤独感に押しつぶされていただろう。
胃袋を満たした彼女は、バッグからメモを取り出す。
そこに書かれていたのは、店長から聞いたこの世界での彼女の勤務先の住所だった。
10年前、自分に自信が持てなくて失敗ばかりしていた彼女が、ここでは支店の店長をしている。
聞いただけではとても信じる事が出来なかった。
(遠くからなら・・・)
彼女は、その欲求を我慢する事が出来ず、こっそり訪ねてみる事にした。
店は仲通町という所のメインストリートにあった。
今度は商業施設のテナントではなく、大きな看板を掲げた一戸建ての店舗だった。
店の前は、途切れる事がなく人々が行きかい、その中の何人かが店の前に出してあるワゴンの商品を手に取った。
そして、その中の何人かは店の中に入った。
彼女は、見つからないように用心しながら、店の中の自分を探す。
「居た・・・」
そこに10年という時を重ねた自分の姿があった。
接客をしながら見せる笑顔。
それは、物陰に隠れながらこそこそ見ている彼女にとって、自分ではないように思えた。
あれは本当にわたし?
彼女は、信じられない思いでその場を離れた。
ホテルに戻ると、フロントに小川からのメッセージが届いていた。
留守の間に来てくれたようだ。
彼女は、メモに書かれた番号に電話を掛けた。
「もしもし、小川さんですか?」
彼女は、この世界の自分を見に行った事を告げた。
そして、彼からのランチのお誘いを受け、教えてもらったレストランに向かった。
「ごめん、ホテルまで迎えに行けなくて」
「こちらこそ、舞台の準備で忙しいのに誘ってもらって大丈夫なんですか?」
「ああ、ちょっとならね」
彼は、パスタの日替わりランチを注文すると、封筒らしきものをカバンから取り出した。
使い方はよくわからなかったが、画面にある『連絡先』というアイコンをタップすると、岩清水の携帯、自宅の番号が入れてあった。
あとはまったくの白紙状態で、何だか心細かった。
店長の番号が10年経った今でも変わっていなかった事が救いだった。
そうでなければ、どれだけの孤独感に押しつぶされていただろう。
胃袋を満たした彼女は、バッグからメモを取り出す。
そこに書かれていたのは、店長から聞いたこの世界での彼女の勤務先の住所だった。
10年前、自分に自信が持てなくて失敗ばかりしていた彼女が、ここでは支店の店長をしている。
聞いただけではとても信じる事が出来なかった。
(遠くからなら・・・)
彼女は、その欲求を我慢する事が出来ず、こっそり訪ねてみる事にした。
店は仲通町という所のメインストリートにあった。
今度は商業施設のテナントではなく、大きな看板を掲げた一戸建ての店舗だった。
店の前は、途切れる事がなく人々が行きかい、その中の何人かが店の前に出してあるワゴンの商品を手に取った。
そして、その中の何人かは店の中に入った。
彼女は、見つからないように用心しながら、店の中の自分を探す。
「居た・・・」
そこに10年という時を重ねた自分の姿があった。
接客をしながら見せる笑顔。
それは、物陰に隠れながらこそこそ見ている彼女にとって、自分ではないように思えた。
あれは本当にわたし?
彼女は、信じられない思いでその場を離れた。
ホテルに戻ると、フロントに小川からのメッセージが届いていた。
留守の間に来てくれたようだ。
彼女は、メモに書かれた番号に電話を掛けた。
「もしもし、小川さんですか?」
彼女は、この世界の自分を見に行った事を告げた。
そして、彼からのランチのお誘いを受け、教えてもらったレストランに向かった。
「ごめん、ホテルまで迎えに行けなくて」
「こちらこそ、舞台の準備で忙しいのに誘ってもらって大丈夫なんですか?」
「ああ、ちょっとならね」
彼は、パスタの日替わりランチを注文すると、封筒らしきものをカバンから取り出した。