時空(とき)の彼方で
「うぬぼれないで下さい」
「理沙ちゃんって、彼氏いるの?」
「いません」
「32歳の君にはいるのかな」
「どうでしょう。普通、32歳にもなったらいますよね? 今のわたしじゃ考えられないけど」
「どうして? 理沙ちゃんかわいくて魅力的だよ」
「わたし、男の人が駄目なんです」
「何? 女性しか駄目って事?」
「そうじゃなくて、男性から声を掛けられると固まっちゃって何もしゃべれなくなるんです」
「そうなの? だけど、俺とは普通に話せてるよ」
「今回は、出会いが特殊だったからですよ」
「そうかな? 俺達、出会うべき運命だったんじゃないかな?」
「時空を超えて、運命の人に出会ったって事ですか?」
「まあ、そんな感じ」
「そうだ。カフェで言ってましたよね。前にもわたしのような子に会ったって」
「ああ」
「その話、聞かせてもらえませんか?」
「わかった。でもまずは、ここから出よう」

 彼女は、再び鍵を閉めると、彼と一緒に坂道を下った。

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