時空(とき)の彼方で
3年前の出来事
それは、今から3年前の事だった。
当時31歳だった彼は、20日間の公演を終えて打ち上げをした後、ほろ酔いかげんで家に向かっていた。
時刻は午前3時半。
タクシー代をけちって徒歩で帰る事にしたものの、アパートまでは30分以上かかる。
「タクシーにしとけば良かったかな」
そう後悔したものの、路地裏に入ってしまったので通りかかるタクシーもいなかった。
歩いて帰るしかない。
軽い溜息を漏らし、更に狭い路地へと入り込んだ。
そこで一瞬足を止める。
10メートルほど先の街灯の下に、髪の長い女性が佇んでいたのだ。
こんな夜遅くに何をしているのだろう。
彼の脳裏に、それがこの世のものではないのではないかという思いが過ぎった。
それでも少しずつ歩みを進めて行くと、女性の方も彼に気づいたようで、じっとこちらを見ていた。
「こんばんは」
おそるおそる、彼は声を掛けた。
「こんばんは」
彼女の小さな声が返って来た。
良かった。
どうやら幽霊ではなさそうだ。
「こんな所で何をしているんですか?」
「・・・」
「良かったら、明るい通りまで送りましょうか?」
「あの・・・」
「はい?」
「ここ、どこですか?」
「はい?」
夜も遅いという事もあり、彼はひとまず女性をアパートへ連れて帰った。
舞台で疲れ果てていた彼は、話は翌朝聞く事にして、とりあえず自分のベッドを彼女に譲り、自分は隣のキッチンの床で眠った。
眠るのが遅かったせいか、目が覚めた時には正午を回っていた。
「起きてますか?」
閉められた扉に向かって声を掛けると、すぐに返事が返って来た。
「開けても大丈夫ですか?」
「どうぞ」
当時31歳だった彼は、20日間の公演を終えて打ち上げをした後、ほろ酔いかげんで家に向かっていた。
時刻は午前3時半。
タクシー代をけちって徒歩で帰る事にしたものの、アパートまでは30分以上かかる。
「タクシーにしとけば良かったかな」
そう後悔したものの、路地裏に入ってしまったので通りかかるタクシーもいなかった。
歩いて帰るしかない。
軽い溜息を漏らし、更に狭い路地へと入り込んだ。
そこで一瞬足を止める。
10メートルほど先の街灯の下に、髪の長い女性が佇んでいたのだ。
こんな夜遅くに何をしているのだろう。
彼の脳裏に、それがこの世のものではないのではないかという思いが過ぎった。
それでも少しずつ歩みを進めて行くと、女性の方も彼に気づいたようで、じっとこちらを見ていた。
「こんばんは」
おそるおそる、彼は声を掛けた。
「こんばんは」
彼女の小さな声が返って来た。
良かった。
どうやら幽霊ではなさそうだ。
「こんな所で何をしているんですか?」
「・・・」
「良かったら、明るい通りまで送りましょうか?」
「あの・・・」
「はい?」
「ここ、どこですか?」
「はい?」
夜も遅いという事もあり、彼はひとまず女性をアパートへ連れて帰った。
舞台で疲れ果てていた彼は、話は翌朝聞く事にして、とりあえず自分のベッドを彼女に譲り、自分は隣のキッチンの床で眠った。
眠るのが遅かったせいか、目が覚めた時には正午を回っていた。
「起きてますか?」
閉められた扉に向かって声を掛けると、すぐに返事が返って来た。
「開けても大丈夫ですか?」
「どうぞ」