歩道橋で会おうね。
「お姉さん…良いですか?」
「はい、構いません。
彼らはハルキの友達です。
今ここで聞かなくても、後日わたしの口から言うつもりでしたから」
「…では、落ち着いて聞いてください」
少し間を置き、オジサンは口を開いた。
今更だが、オジサンは医者らしい。
近くにいる女性は、看護師だろう。
「ハルキくんには、記憶喪失の傾向があります」
…記憶、喪失?
そんなの…現実に、しかも僕に?
でもそう考えれば、覚えていないのにも納得がいく。
「ハルキくんは事故の時頭を打ち付けたと思われます。
頭の部分に怪我はありませんでしたが、そのショックで記憶を消してしまったのかもしれませんね。
ですが全く忘れたわけではありません。
恐らく奥深くに眠っているだけでしょう。
いずれ思い出しますよ」
「それは…いつになりますか?」
羽菜さんが尋ねる。
この人は、僕の義理の姉らしい。
何故…義理なんだ?
僕の両親が来られない所を見ると、家庭環境が良いとは言えなさそうだな。