歩道橋で会おうね。
話を聞き終えた僕は、俯いた。
「そういうことだから。
そんな人たち、両親と思わない方が良いわよ」
「そのこと、記憶を失う前の僕は知っていたんですか?」
「ええ。
元々明るい性格だったんだけど、わたしと姉弟になった理由を聞いてからは、少し塞ぎこむようになったのよね…。
ハルキ、気にしないで良いから」
「…はい」
「わたしがハルキの親代わりになるから。
何かあったら頼りにしていいから。
ハルキが苦しむのは、見たくないから…」
「…ありがとうございます、羽菜さん」
それから羽菜さんは、僕の記憶が戻るよう、決して願っていなかった。
完全に願わないわけではないが、記憶が戻らなくても構わないと言ってくれた。
僕の忘れた記憶は、過去のことだから。
過去のことは気にしないで良いと、何度も言ってくれた。
でも僕は。
何か大切なことを忘れている気がしてならないんだ。
時々夢に出てくる、幼い少年と少女。
少年は僕ではない。
あの真島双子ではない。
少年と少女と僕。
楽しそうに話している光景ではない。
映像とも絵とも取れない、不思議なモノ。
一体、誰なのだろう?
少年と少女が、僕の失った記憶に関係しているのだろうか?
誰だ…?
そして、君たちは僕に、
何を伝えようとしている…?