歩道橋で会おうね。









「ハルキも不思議がっていたよ。
何であーちゃんは離れないんだろうって。

これは羽菜さんから聞いたことなんだけど。

ハルキは記憶を失ってから、誰かと深く関わることをやめたみたいなんだ。
多分、また忘れるかもしれないっていう恐怖心があるんだろうね。
忘れた時相手が哀しむ顔を見たくないから、ハルキは深く人と関わらない。

俺らはよく知らないんだけど、ハルキは実のご両親と仲が良くないみたいで。
記憶を失う前は何度も衝突して、記憶を失った後は衝突はしないものの口を利かなくなったんだって。
親と口を利かなくなった原因は、忘れたくないから深く関わらないんじゃないかって、羽菜さんは分析していた」




やっぱり…孤独なのかな?

記憶を失うことって。




だって何も覚えていないんだよ。

周りは覚えているのに、自分は覚えていないなんて。

それほど孤独なことや、哀しいことってあるのかな?




私の頬には、涙が伝っていた。






「病気じゃないから、ハルキくんがこれ以上記憶を失うってことはないと思うんだけどさ。
1度記憶を失っているから、怖いんだろうね」




ボソと、アユが呟く。

私を真っ直ぐ見つめる瞳に、迷いはない。




「アユ!?」



ずっと俯いていたアユに、驚くアックン。

そんなに驚くことかい?






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