歩道橋で会おうね。






文菜さんは話すことを止めない。



「ワタシの初恋だったのよ、フミヤさんは!
フミヤさんも、ワタシを愛してくれた!
子ども嫌いだったフミヤさんだから、子どもは育てず、2人で一緒にいようって誓い合ったのに!

どこの誰かもわからない不良に、ワタシは捕まって犯されて!
ワタシはハルキを宿した!
フミヤさんは子ども嫌いだから、中絶しろって言ったわ!
ワタシもフミヤさんを愛していたから、そうしようとした!

でも、ワタシの父親はそれを許さなかった!
生まなければ、この場で殺すって!
だからワタシはハルキを生んだわ。

フミヤさんはアッサリとワタシを捨てた!
子ども嫌いな上、どこの奴かもわからない男との子どもを生んだワタシなんて嫌だって!
ワタシはハルキを恨んだわ。
ハルキさえいなければ、ワタシはフミヤさんと一緒にいれたのに!

ある日父親はどこかの会社の跡取り息子をワタシに紹介した。
それが羽菜、あなたの父親よ。
あなたの父親は、早くに奥さんと死別して、まだ幼いあなたを男手ひとつで育てる自信がなかったから、しょうがなくワタシと結婚した!
奥さんしか愛せないけど、羽菜のため結婚してほしいって!
ワタシもあの人も、望まない結婚をした!

全て全て、ハルキのせいよ!
ハルキさえいなければ、ワタシもあの人も、幸せになれたはずよ!

父親なんて無視して、ハルキを殺せばよかったわッ!!」





文菜さんは肩を激しく上下させながら話し終えた。

文菜さんを真ん丸目で見ていた羽菜さんは、気まずそうに切り出した。




「…フミヤって…もしかして、銀史也?」

「…ええ、そうよ」



銀史也。

今や知らぬ人はいないほど、大物俳優だ。

甘いマスクとイケメンボイス、独身って面で多くの支持を集めている。

銀史也が、文菜さんの初恋相手…。








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