歩道橋で会おうね。
「文菜さん、そんなことハルキくんの前で言わないでくださいよ!
確かにハルキくんは意識不明ですから、聞けることはありません。
ですが、私たちは全員聞きました!
文菜さんは確かにフミヤさんと結婚できませんから、幸せではなかったかもしれません。
ですが子どもが出来ただけで、文菜さんとハルキくんを捨てたフミヤさんが、その先あなたたちを幸せにできるなんて、考えられません!
確かにどこの男との子どもかわからないハルキくんを、フミヤさんが嫌がるのもわかります。
ですがその不良と子どもを作りたいと、文菜さんが願ったわけではないでしょう?
文菜さん言っていたじゃないですか。
文菜さんはただ捕まって犯されただけだって。
羽菜さんのお父さんとの結婚に、愛はないかもしれません。
だからハルキくんを嫌うのは、間違っています。
羽菜さんのお父さんも、男が嫌いかもしれません。
可笑しいと思いません。
私も嫌いですから。
でもそれでハルキくんを嫌うのは、ハルキくんがあまりにも可哀想です。
ハルキくんは好きで男として生まれてきたわけじゃありません。
自分が男に生まれるか女に生まれるかなんて、誰にも決められないんです。
私は羽菜さんは正しいと思います。
羽菜さんはただ1人、実のお父さんや文菜さんの意見を無視し、ハルキくんの味方になってあげた。
凄く立派な行為だと思います。
そんな羽菜さんを嫌ったり見捨てるのは可笑しいと思います!
羽菜さんだけでなく、ハルキくんも。
愛してあげてくださいよ…」
私を声が出ないのに、叔母さんや叔父さんが大事に思ってくれたように。
会話なんて出来ないのに、ずっと傍にいてくれた、味方でいてくれたアユやアックンのように。
そして私も。
何があっても、叔母さん・叔父さん・アユ・アックンを支えて行ける。
かつて私が支えてもらえたように。
そして今は。
ハルキくんも支えてあげたい。
あの日…歩道橋で私が落ちそうになっていた所を助けてもらったように。
私もハルキくんが落ちそうになっていたら、助けてあげたい。