歩道橋で会おうね。
「…大丈夫?運ぼうか?」
声をかけてきたのが、颯天だった。
驚いた僕は、最初は断った。
でも意外にも颯天は頑固で、「ボクが運ぶ」と言って聞かなかった。
お言葉に甘えて本を数冊渡すと、颯天は全部持つと言いだした。
さすがにそれは困ったので、半分ずつ持つことにした。
「そういえばボク、銀くんと話すの初めてだよね。
お兄ちゃんはよく話すみたいだけど。
ボクは吾妻颯天、よろしくね」
「よろしく颯天。
颯天はよく本を読んでいるよね。
面白いの?」
「お母さんがね、ボクによく本を貸してくれるんだ。
お母さんが選んでくれる本は全部面白いんだ。
それでボクも読むようになったんだ」
お母さんから本を貸してもらう、か。
僕には程遠い世界だなぁ…。
母さんと話す機会なんて、テストを返された日だけだから。
「銀くんは読まないの?」
「…そうだね。
あんまり読まないかな。
…もし良かったら、僕に本を貸してくれないか?
颯天が読む本なら、面白いと思うんだ」
「うんっ!」
「そうだ。
僕のことハルキって呼んでよ。
僕は颯天って呼んでいるんだから」
「わかった、ハルキ!」
僕とは全然違う世界にいる颯天。
だけど僕は颯天が持つ明るさに、惹かれたんだと思う。