歩道橋で会おうね。
暫く走り、着いたのは大きなホテルの前。
車を降りた母さんを、僕は追う。
受付の人と何かを話した母さんは、受付の人に連れられ、華やかな場所へ向かった。
天井には大きなシャンデリアが煌めき、床は一面の赤い絨毯。
丸く白いテーブルクロスのかけられた高級そうな椅子には、蝋燭(ろうそく)が置かれていた。
「やぁ文菜さん。こちらですよ」
誰もいない静かな部屋(ホール?)の1つのテーブルに、見知らぬ男性と小さな女の子が座っていた。
文菜…あの時オジサンが言っていた母さんの名前。
母さんの知り合いってこと?
「お待たせしたわね」
「いえいえ、お気にせず」
男性は笑顔を浮かべるけど、その顔にはイラついている表情も見える。
…だいぶ待ったんだなぁ。
僕のせいなのかな…?
「さ、ハルキ座りなさい」
「はい」
「礼儀正しいお子さんだね。名前は?」
「…銀、遥希」
「ハルキくんか。良い名前だね。
…え?銀?」
男性は母さんを見た。
「銀ってもしかして、銀史也の…?」
「いえ。フミヤさんとの息子ではありません。
確かにワタシは、フミヤさんと知り合い、ですけど」