歩道橋で会おうね。
小学6年生になってから、颯天は急によそよそしくなった。
話しかけても無視されてばかり。
兄の晴実くんに事情を聞いても、知らないの一点張り。
そこで僕は、晴実くんから吾妻家の事情を聞くことになる。
晴実くんと違い幼少期から大人しい性格で友達の少なかった颯天は、友達が多く人気者な晴実くんより、両親に可愛がられる機会が多かったそうだ。
テストで颯天より晴実くんが良い点を取っても、両親が褒めるのは颯天くんだけ。
両親が自分を見ていないことを日々痛感している晴実くんは、颯天に自慢するようにますます友達を作った。
晴実くんに自慢されていることを痛感した颯天は、ますます両親に甘えるようになった。
双子の兄弟の些細な自慢のやりあいは、2人の絆に出来た溝を、ドンドン深めて行った。
両親は共働きのため、2人だけで留守番する機会も多々あったそうだが、2人は決して話すことがなかったらしい。
そのため晴実くんは、颯天がどんな趣味を持っているかとか、颯天が僕と仲が良いことなど、颯天に関することは何も知らなかったのだ。
だから晴実くんは、颯天が何故急によそよそしくなったのか、理由は分からないと言う。
「折角の双子なのに…。
もっとお互い仲良くして、協力すべきだよ」
「…そんなこと、銀になんて関係ないだろ。
高岡のこといじめていたくせに、そんな綺麗事並べるなよ」
晴実くんは、冷たい瞳で、真実を言い放った。
やっぱり、言葉は刃だ。
こんなにも心をえぐる。
…僕も、気を付けないとな。
そんなことを決めて、遂には卒業式を迎えた。