歩道橋で会おうね。
…わたくしのことは置いておきましょう。
何も語ることはないですから。
「…バレていたんですか……」
「ええ。
わたくしを騙すなど、100年早い」
「…凄いですね」
「…わたくしみたいな立場となれば、きっとハルキくんもわかりますよ」
「そうですか…」
「ハルキくん。
記憶は全て…戻りましたか?」
「…はい」
「そうですか。
…別に話さなくて良いですからね。
話すべき人間は、わたくしではないはずです」
「…アオに話せ、と言うのですか」
「ええ。
彼女に話さず、誰に話すのです?」
「…でも……僕は…」
「立ち止まらずお進みなさい。
こんな所で止まっていては、何も出来ませんよ」
「…わかってます……」
「お姉さんには、ご自分でお伝えしますか?
それとも、わたくしからご連絡いたしましょうか?」
「自分でやります。
…ところで成宮さん」
「おや?
何故わたくしの名字をご存知で?
わたくしは名字など、一切名乗らないのですが」
「その話しっぷりでわかりますよ。
普通の医者は、そんな話し方はしない。
もう少しゆるいはずです」
「…なるほど、この話し方で。
固すぎですかね?」
「いえ。
院長の息子さんでしょう?
敬語が当たり前とか言われないんですか?」
…ふぅ。
何故目の前の、わたくしより5個も年下の少年に、わたくしのことが全てバレているのでしょうか?
常に自分を隠し続けてきたわたくしですのに。