歩道橋で会おうね。








…わたくしのことは置いておきましょう。

何も語ることはないですから。




「…バレていたんですか……」

「ええ。
わたくしを騙すなど、100年早い」

「…凄いですね」

「…わたくしみたいな立場となれば、きっとハルキくんもわかりますよ」

「そうですか…」

「ハルキくん。
記憶は全て…戻りましたか?」

「…はい」

「そうですか。
…別に話さなくて良いですからね。
話すべき人間は、わたくしではないはずです」

「…アオに話せ、と言うのですか」

「ええ。
彼女に話さず、誰に話すのです?」

「…でも……僕は…」

「立ち止まらずお進みなさい。
こんな所で止まっていては、何も出来ませんよ」

「…わかってます……」

「お姉さんには、ご自分でお伝えしますか?
それとも、わたくしからご連絡いたしましょうか?」

「自分でやります。
…ところで成宮さん」

「おや?
何故わたくしの名字をご存知で?
わたくしは名字など、一切名乗らないのですが」

「その話しっぷりでわかりますよ。
普通の医者は、そんな話し方はしない。
もう少しゆるいはずです」

「…なるほど、この話し方で。
固すぎですかね?」

「いえ。
院長の息子さんでしょう?
敬語が当たり前とか言われないんですか?」




…ふぅ。

何故目の前の、わたくしより5個も年下の少年に、わたくしのことが全てバレているのでしょうか?

常に自分を隠し続けてきたわたくしですのに。







< 229 / 259 >

この作品をシェア

pagetop