歩道橋で会おうね。
「お願いがあります」
「お願い、ですか」
「ええ。実は―――…」
ハルキくんからのお願いを聞いたわたくしは、思わず溜息を吐いた。
一体何度目でしょうね。
「何を言い出すんですか。
そんなお願いをわたくしに聞け、と?
お断りしますね」
「…何故ですか」
「わたくしは医者です。
そして院長の息子でもあります。
そんなわたくしが、ハルキくんの身勝手なお願いを聞くことは出来ません」
「…相変わらず人は、大事なのは自分の名誉なんですね」
「…ッ」
痛い所をつきますね、全く。
「…俺を他の奴らと一緒に見ないでくれ。
俺は他の奴らとは違う。
…聞こうじゃないか、お前のお願いとやらを」
あーあ。
今まで隠してきた俺自身が、丸見えじゃないか。
常に上から目線の、自己中心的。
それが、本来の俺。
アッサリ猫の皮を取るなんて。
こんな年下の餓鬼…じゃない、患者さんに。
「ありがとうございます。
では今夜から準備に入ろうと思います。
…お願いしますね?」
「へいへい。
その代わり、俺のこの性格、他の奴らにバラすなよ。
俺が今まで積み上げてきた名誉とかがぶち壊されるのはごめんだからな」
「わかっています」
まるで悪魔のように微笑んだハルキくんは、ベッドから立ち上がる。
…二度と会いたくないですね。
こんな厄介で、わたくしを壊すような患者さんは。
…ハルキくんだけで十分ですよ。