歩道橋で会おうね。
確か自分のことを“わたくし”って言って。
常に敬語で。
常に不敵な笑みを浮かべていて。
掴めない人で。
…名前、なんて言うんだろう?
よく思えば、あの人のこと、私は最初出会ってから、ずっとお医者様と呼んでいたから、名前を呼ぶ機会なんてなかったんだ。
向こうは「アオちゃん」と呼ぶのに!
「…どうされましたか?」
ナースステーションの前で固まる私と、慌てた羽菜さんを見かねた看護師さんが、私たちの元へ来る。
「お、お医者様を探しているのですがっ…」
「名前は何と言いましょう?」
「それが、わからなくてっ…」
「そうですか…。
では特徴を聞いても良いですか?」
「えっと、えとえと。
自分のことはわたくしって言って、常に敬語で、不敵な笑みを浮かべていて、掴めない人で…」
「…?」
クエスチョンマークを頭に浮かべる看護師さん。
わからないよね、こんな曖昧な説明で。
わかる人がいたら、もう奇跡っ…。
「成宮先生のことじゃないかしら?」
…奇跡、起きた?