歩道橋で会おうね。








「…ええ。
気が付かない方が可笑しいです」

「聞きたいことがある」

「…なんですか?」

「何故お前は、あのコンビニへ行くことを躊躇った」

「…」

「ハルキは自分が記憶喪失であることを知っている。
ただその失った記憶が何なのかは俺らは教えていない。
…思い出したのか?」

「……いえ、まだです」

「何か思い出したことはあるのか」




ハルキくんが何かを言おうとしたところで、あたしは2人を止めた。



「お兄ちゃん、別の場所で話そう」

「どうしてだ?」



さっきから、道路沿いにそびえ立つ木々に隠れながら話すあたしたちは、遠目から見れば変な人だ。

その視線に気が付いたのか、お兄ちゃんは頷いた。



「そうだな。
別の場所で話そう。
場所は、ハルキの家の近くで良いだろう」



あたしたちの両親は共働きで、帰るのが遅く、夕食は大抵7時頃だ。

ハルキくんの家も少々複雑な上両親は帰るのが遅いため、同じ頃かもっと遅くに夕食の時間を迎えると言う。

羽菜さんは帰りはまちまちで、早めに帰ってきたとしても料理は破壊的だそうだ。

ハルキくんは料理は出来るらしいが、ハルキくんと羽菜さんだけ夕食と言うのは両親が許さないみたいで。

なんでも、ご飯は一家揃ってが決まりらしい。

今時古風な家だと思う。







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