歩道橋で会おうね。
暫く無言のまま歩き、あたしたちが話す場所に決めたのは、ハルキくんの家の近くにある小さめの公園。
当たり前だけど誰もいない。
記憶喪失など、普通の人はアッサリ信じない話をするにはもってこいの場所だ。
「どうだ?少しは戻ったのか?」
「…いえ、まだです」
「俺らのことも、あーちゃんのこともか?」
「…ええ」
その表情や口調に、嘘はない。
実はあたしたち双子には、不思議な勘を持っている。
いつでも機能するわけではないが、人が嘘をついているかついていないか見分けることが、たまに出来る。
今のハルキくんは…嘘ついていない。
「…ただ、少し気になることがあります」
「何だ?些細なことでも良い、言ってくれ」
あたしたちがハルキくんの記憶を戻す手助けをしているのには、ある理由がある。
まぁその理由は…後ほどということで。
「アオが声を失った理由は…僕にあるんですか?」
確かめるように、一言一言呟くハルキくん。
毒を吐いて昼間あたしたちを怒らせていた面影は、ない。
記憶を失ったことで、ハルキくんは本当の人格が一体どんな性格をしているのか、本人でもわからないほど、コロコロ変わる。
あたしたちは見たことないけど、羽菜さんはあるらしい。
殺気を出しているハルキくんや、小さい子のように甘えるハルキくんもいるらしい。
まぁ羽菜さんのことだ。
嘘か本当かは、わからない。