歩道橋で会おうね。






暫く無言のまま歩き、あたしたちが話す場所に決めたのは、ハルキくんの家の近くにある小さめの公園。

当たり前だけど誰もいない。

記憶喪失など、普通の人はアッサリ信じない話をするにはもってこいの場所だ。



「どうだ?少しは戻ったのか?」

「…いえ、まだです」

「俺らのことも、あーちゃんのこともか?」

「…ええ」



その表情や口調に、嘘はない。



実はあたしたち双子には、不思議な勘を持っている。

いつでも機能するわけではないが、人が嘘をついているかついていないか見分けることが、たまに出来る。

今のハルキくんは…嘘ついていない。





「…ただ、少し気になることがあります」

「何だ?些細なことでも良い、言ってくれ」



あたしたちがハルキくんの記憶を戻す手助けをしているのには、ある理由がある。

まぁその理由は…後ほどということで。



「アオが声を失った理由は…僕にあるんですか?」



確かめるように、一言一言呟くハルキくん。

毒を吐いて昼間あたしたちを怒らせていた面影は、ない。



記憶を失ったことで、ハルキくんは本当の人格が一体どんな性格をしているのか、本人でもわからないほど、コロコロ変わる。

あたしたちは見たことないけど、羽菜さんはあるらしい。

殺気を出しているハルキくんや、小さい子のように甘えるハルキくんもいるらしい。



まぁ羽菜さんのことだ。

嘘か本当かは、わからない。








< 76 / 259 >

この作品をシェア

pagetop