歩道橋で会おうね。

「…ハルキはどう思う？」

「僕…ですか？」

「ハルキにあると思うか？
あーちゃんが声を失った原因が」

「…わかりませんね」




ハルキくんが記憶を失い、５年経つ。

なのに…まだ何も思い出していないなんて。



ハルキくんを診た医者は、アオに言ったことと同じことを言った。

「何かきっかけがあれば戻る」って…。



アオの声も、失ってから５年経つけど。

何も戻らない。

戻る気配もない。



アオ自身が、声を出したくないと、思うのだろうか？

ハルキくん自身が、記憶を戻したくないと、思うのだろうか？



自分自身が封じ込めてしまえば…。

一生…戻らないまま。




「お兄ちゃん」



あたしはハルキくんに聞こえないよう呟く。

隣にいるお兄ちゃんには聞こえたみたいだ。



「どうしたアユ」

「…本当のこと言う？
アオにも、ハルキくんにも」





あたしなりの決断だった。