枝垂れ桜に舞う蝶
「紅葉ですか?あぁ、この楓の別称ですね」
総司は私の呟きに応える
私には楓という言葉以外は聞き取れなかった
その言葉さえ総司の声と別物のように聴こえる
他に聴こえているのは紅葉の葉が落ちる音
胸の中では、《椛―モミジ》《楓―カエデ》というどこか懐かしい響きが反芻していた
「も、みじ……………かえ、で……………」
椛と楓……………?
それは、それは……………懐かしい名前……
私は自分が立っているのかも何処を向いているのかも
分からなくなる
「あ、あ、あぁあっ……………あぁあああああっ…………………………!!」
言葉にならない声を出す
キモチワルイ……………吐きそうだ
最後に見えたのは、あの人達と同じ名を持つ樹
その樹の血の色のように紅い葉の雨だった