枝垂れ桜に舞う蝶

「来られはったようや。旦那はん方、今宵はよろしゅう」


私は慇懃に頭を下げた

スイッチが入る

そう、仕事のスイッチが


「旦那様のお着きです」


私が言った後に襖が開き、禿が告げる


「桐葉は本当に耳が良いね……」


呆れ半分に槙は言う

パタパタパタ

先程より断然重い足音がする

男性の足音だ

「こちらが呼び出しておいて遅れてすまない、近藤」


その人はそう言って座敷へ上がってきた
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