妖華にケモノ
この大きな門には内側からたいそう大きな錠前がはめられており、到底開くはずもない。
木で作られた壁は梯子を使わない限り外には出られそうも無かった。

「どうすればいいの..」

私がその場にうずくまり何かいい方法がないか頭を抱え考えこんでいた時だった。後から肩をポンッと叩かれる。後ろを振り向くと、片目を髪で隠し、長髪を一本に束ねている綺麗な女性が心配そうな表情をして立っていた。

「ここで何をなさっているのですか?」

と聞かれ事情を話すと。

「それはそれは…。ここは早くに閉まってしまうんです。一度閉まってしまうと朝まで開きません。もしかして吉原は始めてですか?」

「ええ。高尾さんに頼まれていた着物を届に来ただけなんですけど」

「高尾?.....そうですか..」

何故か女性は深く考えこむと一瞬だけため息を漏らした。そしてまた口を開く。

「行く宛がなさそうに見えますが」

「はい。そうなんです」

「私の部屋で良ければお貸しいたします。桜の咲く季節でも夜は寒いですからね。それに..」

「?」

「いいえ、何でもありません。行きましょうか」

女性に腕を引っ張られ、小走りに後を付いていく。やはり吉原の夜は恐ろしいくらいに美しい。何かを持って行かれてしまいそうだ。





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