妖華にケモノ
「高尾おいらーん」

バタバタと足音をたてて現れたのは着物を持った男の人。


「あーはいはい。葉月、また近いうちに会うことになるじゃろう」

高尾という人はため息まじりで笑うと来た廊下を歩いて帰ってしまった。
一体何だったんだろうか。

「あの人ね、いつもうちの店で着物を仕立ててくれって毎回来てくれるのだけれど..困ったものね」

お母さんが大きなため息をついた。


「そうだったんだ」


あ、、でもあの人、なんで私の名前知ってたんだろう。
なんであんな悲しそうな顔をするの?。

「ねぇ、お母さん。アタシの名前あの人に言った?」

「何言ってんのよ。いくら常連さんでも身内の事は話さないよ」

あれ?..何か気になる。
そう言えばさっき注文した品物があるはず..。

「お母さん!アタシにあの人の着物届けさせて!」

「急にどうしたのよ。別にいいわよでも場所が場所だからねぇ。...届けたらすぐに戻ってくるのよ」


お母さんは少し考えこんでいたけどすぐに帰ってくるという約束で行かせてもらえることになった。
聞きたいこと、聞かないと。



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