妖華にケモノ
「じゃあ行ってくるね」

「渡したらすぐ戻ってくるのよ」


私は着物の入った葛籠（ツヅラ）を風呂敷に乗せ手際良く包む。
そして、手造りの下駄をはいて家を後にした。


教えられたとうりの道を行くんだけれどもどうやら道に迷ってしまった。
曲がり角が沢山あるせいかもしれないわ。

「えーと。この道を左に…」

最後の分かれ道を左に曲がった所に大きな赤い鳥居があった。大門と書かれた板は少々みにくい。
その奥には何があるのだろうか。

大門をくぐるとそこはとても賑やかで建物が赤に塗られていた。夜に来るととても綺麗なのだろう。
何処も同じ様な所で高尾と呼ばれる男がどこにいるのか全くわからない。
そう思って足を進めていると人が列をなして集まっているのが見えた。気になり列に近づく。

「高尾の道中よ！！」

「花魁道中が始まるぞ」


「花魁道中？」

「そうさ！吉原一の花魁、高尾太夫よ」


隣の女性が指を指した方向には昨日の男が後に人を引き連れて道の真ん中をゆっくりと進んでいる。綺麗な着物を着て、三枚歯下駄を履き、
連れが唐傘をもっている。


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