鳥籠の底は朱い道
狼達も流石にこれだけ襲いかかっても一歩も引かない朱道に対して、警戒を持ったのだろう。だが、それは全くの意味を為さない。何故なら……。
「はぁ、血が足りねぇな。あぁもっとだ、もっともっともっと血を流せよ! この地面を血の泉に変えるぐらいに!」
朱道は狼達の戦力を半分くらいまで削ったが、それは全て狼達が襲ってくるのを返り討ちにしたものばかり。
まだ朱道は自ら攻めてはいない。
もちろん朱道は反撃タイプの戦闘スタイルではないし、守りの戦いなどあり得ない。だから攻めの戦いこそが朱道の戦い。
そうして雄たけびと共に踏み出した一歩は狼達にとって脅威でしかない。
殺気は狼の群れにも負けず、頭上の星空の如き輝きを放ち、全ての狼に刺さる。
狼ですら身震いする朱道の気迫。その身震いの内にも無残に二匹の狼は朱道の手によって赤い狼と化す。
狙われたら終わり、狙われていないなら逃げる。
もうすでにその場では狂気の鬼の朱道に対し、弱き餌と化した狼しかいない。
――だが、もう遅い。暴走した朱道を止められる狼も、逃げ切れる狼もいなく、遂には全身に赤を纏って笑い散らす朱道しか残っていない。

「――はははは、誰が弱いって? ふざけるな! オレは誰にも負けない、オレを殺せるものなら殺してみろ!」

そうして朱道は百の狼の死体と血の泉の上で叫ぶ。
それは自分に向けて弱いと言い放った黒馬に対しての不満の解放として……。
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