鳥籠の底は朱い道
彼に血の世界を与えたのは他ならぬ彼の父親。
名を立花黒馬(たちばなくろば)と言い、血の世界に身を置くのはその黒馬の息子である立花朱道(たちばなしゅどう)。
朱道は生き物を殺し続けて優に十年というキャリアを持っている。今の年齢はまだ高校生にも満たない十四歳。
ならば朱道が初めて生き物を殺したのは右も左も理解しない四歳の時となる。
もし、その朱道の初めての犠牲者が目に見えないような生き物、不意に殺してしまうような虫ならばまだ幾分か首を縦に触れる。
――だが、朱道が初めて殺したのは同じ年である子犬であり、四歳の犬はすでに子犬ではなく大人の犬だろう。
だけど四歳の朱道は全く握れることない右手でナイフを握り何回も、何回も何回も犬を刺していた。
鳴くのは二体。
一つは血を噴き出しながら死を受け入れていながらも抵抗すり犬。
もう一つは犬を刺している四歳の子供。それが命を奪うモノ、朱道である。
言うまでもないが四歳の子供がどうやっても犬をナイフで殺すことなんて出来ない。
余程、神懸かった“殺”の才能がなければ無理。もちろんのこと朱道にはそれが最初はない。
だから朱道の手にかぶさる二周りも大きい手は朱道の意思に関係なく、ただ無理やりにナイフを握らせ上下運動を続ける。
まるで手本として見せるのではなく、体に染み込ませるための実戦として朱道の手を操る。
――朱道の父、黒馬はそうやって朱道に無理やりな血の世界を与え続けた。

理由はただ単純に息子を強くしたかったから。だけど強くさせたい理由は勝手気ままと言う他ない。
自分が出来なかった過去の復讐を息子にやらせようというのだから、黒馬という人物の性根の腐りようはこれ以上の説明をする必要がない。
……だが、このままだと黒馬という人物はただの人間の屑でしかない。だから何故そんなことになったのか、過去に何があったのか出来るだけ分かりやすく説明しよう……。
< 2 / 69 >

この作品をシェア

pagetop