鳥籠の底は朱い道
赤が失われた戦い
――声が聞こえる。
どんな声で何を言ってるか分からない。恐らくそれは夢だろう。
そんな夢はしょっちゅう見ていたような気もする。だけど今日に限って声ははっきりと聞こえ、しかも何を言っているかも分かる。

『お前は弱い』

いきなり聞こえた声がそんな一言だったからムカつくが、何故か言い返すことは出来ない。
自分自身でも強いとは思っていないが、弱いとも思ったことはない。

『強くなりたいか』

次に聞こえたのが自分にある当り前の欲望。
強くなるために生きて、殺しまくり血を浴びてきたのだから。

『なんのために強くなりたい』

…………即答出来ない。
何故という質問はおかしい。自分は強くなりたいから強くなりたい。理由やきっかけなどなく、強さを目指すことが当たり前だったから。
――その原因は言うまでもない、父である黒馬が問題である。

『強くなりたいなら一生分の負けを認めろ』

……? 言っている意味を理解出来ない。
負けを認める? それも一生分。
もっと具体的に言ってほしいものだ。さっきの三つの言葉とは明らかに異なる言葉。
だけど言葉は続かず、そして意識的に夢は覚めていく。
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