鳥籠の底は朱い道
朱道が怒りを露にしたのは黒馬が椿に下した命令。

それが一切の戦闘を禁止して、自分の世話をすること。

殺したい相手に世話をされるのはもちろん、戦えないというのはストレス以外の何物でもない。
当然朱道は反対する……が、反論した黒馬はここにいないし、いたとしてもはたして朱道は本当に文句を言えただろうか?
そんなことを理解した朱道は再び大人しくなり、舌打ちをするのみ。
「なるほど、本当に黒馬の言うことは絶対なんだ。けど、本当は私、黒馬の言うことなんて聞くつもりはない。だから本当に戦いたいならあの部屋に行く?」
驚いた。この女は軽々しく親父の命令を無視しやがった。
けどそれで戦えるなら問題ない。オレが何も言わずに、こいつを殺して消せばいいんだからな。
「当たり前だ。今すぐに行くぞ」
「なんか嬉しそうな笑みだね。けどその前に誓って。私と君だけの時は戦闘ではなく、そうだね、君が神素を扱うための訓練ということにしてほしい」
「それはつまり、親父のいる時以外は殺し合いはなしってことか? そんなことはありえないな。ただあんたが生き延びたいだけだろ?」
「言葉は選んだほうがいい。昨日の戦いで君は神素の発動なしで私に勝つことが不可能だと知ったはず。それに私は君とは違って戦闘場所の制限はない。つまりここでも私だけは戦闘を始められるんだから」
「あ? いいぜ、オレは勝つためならなんでもする。たかだか親父の命令で死んでられない。オレは第一に強くならないといけないんだからな」
< 26 / 69 >

この作品をシェア

pagetop