鳥籠の底は朱い道
――二人だけの戦いが行われて三日目の朝。
そして朱道が気絶から目覚めること裕に十を超える。
「……つ、ば、き。あの女、マジでぶっ殺す」
目を開くと同時に口にする言葉。
それは十度目の気絶の前、朱道が言ったことを見事無残に破ったからだ。
朱道は本気で自分を育てようとする椿に対して、本気の殺し合いを提案して、椿はしぶしぶながらも頷いていた。なのにも関わらず、朱道は負けたのに今、目を開けている。
それはつまり、また生かされたということ。
本当に今では椿を殺すことしか考えていない朱道は、昨日から部屋を出ずに椿を待ち続けている。
――あぁいつの日か、誰かが言った。

『一生分の負けを認めろ』

と、だけど今、正にそんな状況に居合わせ、とうに一生分の負けを受けているだろう。
本来ならば十回……いや十一回は自分は死んでいるのだから。
そして気絶のたびに聞こえる声により、声がなんであるかは理解している。
声は自分の中に眠る何か。それがなんであるかは正確に判明しているわけではないが、恐らく朱雀の血が騒いでいるのだろう。
朱道は確かに朱雀という位を受け継いでいるが、それは正式にではなく無理矢理に前代未聞の方法により。
だから朱雀の血が元々自分のものではないのは端から理解していた。
だけど、聞こえてくる言葉、問いという主張はまるでこれから朱雀の力が開花されるのではと期待される。
――だが、一度たりとも朱雀の力は発動されていない。椿も発動させるように色々と考えて戦っているようだが、殺し合いにある刹那の緊張がない故に、朱道は殺し合いの感覚が薄れている。
それは朱道にとって、どうでもいい戦いに変わっていくのと同じ。
殺し合いこそ生きる理由であり、強くなるための道なのだから。そんな強くなる手段と決めつけている朱道が、殺し合いをしている感覚ではないのだから、強くなる意思は全くないということ。
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