鳥籠の底は朱い道
――実は黒馬は人間とは掛け離れた世界の住人であり、しかもその世界では高い地位を持っていた。
その世界の名を楽園(エデン)と呼び、神の片割れである生神が住む世界。
一番近くで生神を守るのが“守護四神”という先祖代々から受け継がれている四つの絶対的な地位。
そして守護四神を補佐するのが四つの地位である“隊長”で、その地位を黒馬は持っていた。
その世界では守護四神の一人、朱雀は何が気に入らないのか分からないが生神に無言の反抗をして、自分の地位を破棄したも同然の態度でいた。一時期は黒馬よりも低い地位に墜ちたこともあるくらい。
だけど結局は生神に気に入られ見事に失った地位を取り戻した朱雀。
黒馬は朱雀が自分よりも地位の低い時に、散々と地位にものを言わせてこき使ったが生憎と出世された朱雀に対してはっきりと気に入らないでいた。
今から考えれば、その時から黒馬が朱雀に対して異常なコンプレックスを持った時だろう。
それが、月日が経つにつれて朱雀に対する殺意を抱くようにもなる。
――いや正確にはその朱雀の地位を欲するようになる。

死神という生神の対となる存在がいた。
これも神の片割れであり、世界の破壊を望んでいた。しかし生神は世界の存続を願い、生神と死神の世界を賭けた全面戦争が勃発したのである。
しかしそんな非常事態でも黒馬は朱雀の首を狙っていた。
黒馬は、生神を守る存在として朱雀が死神の守護四神的存在、守護四霊の一人であり自分の対となる存在、鳳凰と戦っていたのを知っている。
守護四神と守護四霊の戦いに如何に隊長の地位を持っていても手助けすら出来ない。もし出来たとしても黒馬はどっちに味方しただろうか?

どちらにしても黒馬は戦争の決着がつくまで沈黙を保ち、そしてギリギリの勝利を勝ち取った朱雀に対して、やっと姿を現して弱りかけの朱雀からその地位と力を奪おうとした。
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