鳥籠の底は朱い道
「そんなの……そんなの朱道が可哀そうじゃない。ただあなたの言うものを殺すためだけに生きているなんて。朱道だって人形じゃない。心があるのよ」
「必要ない。そんなものは当の昔に凍らせた、永遠に。溶けることなく朱道は躊躇しないで俺の命令通り殺しを続ける」
「だから、だから私は朱道を殺したのよ……」
後悔とやりきれない怒りを黒馬にぶつける椿だが、それは黒馬とて同じ。
黒馬は強くても本気で朱道を殺しきれない相手を探し椿を選んだ。
だけどその結果は椿が優しすぎるから、自分を犠牲にしてまでも朱道のこれからの人生を考え終止符を打った。
こんなことになる予定は端から二人にはなかった。こんな所で朱道は死ぬはずがなかった。だが、現実では椿が朱道を殺してしまった。
黒馬が椿をここに連れてきたから。
つまり、二人がいたから朱道は死んだということだろう……ただ、まだ朱道の魂は死を受け入れていないのだが……。

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