鳥籠の底は朱い道
今だに黒馬と椿の口論は続いている。この口論はどうやって終わるのだろうか、そう思うほど終わらない水かけ論を繰り返す二人。
――だが、声を潰されたかのように二人の口論を停止させる。

「あ、ありえない」
「うそ、うそウソ嘘……」

声が戻ると壊れた人形のように言葉を繰り返す椿。
驚きながらも喜びの色がある黒馬。
――ただどっちも今、目の前で起き上っているのが“朱道”だと勘違いしていることは間違いない。
「――いい体だ。前の体よりも馴染む、そしてあの朱雀の力もある。この俺は最強だ。この俺の“対”が“同”となっているのだからな。あははははは……」
黒馬と椿など眼中になく、血まみれの“男”は高笑いする。
それははっきりと二人も確信する。目の前にいるのは朱道の体を持つ“何か”であることを。
黒馬は扉の向こう側から、思った質問をストレートにする。
「貴様は何者だ。朱道をどうした?」
「あぁ? あいつは力の使い方を分かっていない。だから俺が変わりに暴れてやる。そうだな、お前も一緒に死ぬか? その椿とかいう女と一緒に」
真っ赤に染まる眼が椿とその扉の向こうの黒馬に向けられる。
「まさか、お前が朱雀だというのか? 力が自立するなんてありえない。貴様は一体誰だというの」
「俺が朱道ではないと屑でも分かるか。だが、力は自立するが俺自身は朱雀などというものでもない。言っても分からないだろうがな」
椿はやっとのことで言い返すのだが、あの血のように光る眼を見ると竦んで何も言えなくなる。
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