鳥籠の底は朱い道
「さぁ死ね。お前は俺の最初の犠牲者だ……?」
――覚悟を決めていた椿だが、急に赤い線が崩れ堕ち、監獄が崩壊していった。
しかも当の本人である“何か”でさえ、何が起こったのか分からないような表情をしている。
だが一瞬でことの事態を理解し、苛立ちを露にする。
「――邪魔をするな! いいから貴様は黙って眠っていろ!」
『あぁ? 何言ってやがる。せっかく力の使い方を理解したんだ。もうテメェは用済みなんだよ。いいからオレの体を返せよ』
一人で会話を始めるがそれは確かに会話であり、話しているのは間違いなく朱道だろう。
「貴様。まさか、わざと俺に体をよこしたな!? 力の使い方を知るために」
『テメェが素直に教えるとは思えねぇからな。だが、やっと理解したぜ。その力の使い方をな!』
「や、やめろ。だから、だから朱雀など忌々しいのだ。俺の対でなければこんなことにはならなかった。前と同じ、俺を吸収するのか!」
『遠慮なく、その力貰うぜ。じゃあな、オレの餌』
暴れる朱道の体が静止し、そしてゆっくりと態勢を整えた時、そこにいるのは“何か”ではなく朱道本人であった。
「しゅ、朱道ですか」
「当たり前だろ? オレはオレだ。他には存在しない。そしてオレはお前を殺すためにここに立っている。分かっているな? 言ってる意味が」
つまり朱道は再戦を要求している。すでに朱雀と謎の力を得た朱道に勝つことなど出来ない椿だが、甘んじて受取り首を縦に振る。
「そう、君が朱道なら、また私は君を殺す」
言葉よりも行動。
椿の神素の解放は、はっきりと朱道を敵視しそして同時に朱道に殺気という意思を贈る。
< 42 / 69 >

この作品をシェア

pagetop