鳥籠の底は朱い道
正直言ってこの二段階目である霊素、ブラッティフィールドを発動させたのは椿以降ない。その必要性が全くなくブラッティロードであっさりと殺してきたから。
そんな朱道がこの空間を作り出したということは、つまり本気であるということ。
しかし完成度から強度、威圧感から重圧感といったものは以前の発動を遙かに上回る。霊素の使い方になれたせいもあるだろう。完璧に使いこなしている。
――でも違う。これはすでに内に潜む未知なる力ではない。
朱道独自がただ本気で願う自分だけの力。そして“世界”である。

“唯我独尊の赤”

血は生きている証拠。

故にこの赤く染まった死の世界こそ朱道の生きる世界。

こんなものを感じさせられたなら、どんなものでも死を受け入れてしまうだろう。それほど圧倒的。
――それは黒猫とて例外ではない。だが黒猫が感じているのは死という未来だけで、それをただ待つことなどしない。
これははっきり言って今までにない行動をした。それが抵抗。死を受け入れながらも黒猫は更に抵抗して朱道に向かってきたのだった。
その瞳には今だに色は消えていない。ただ生きることだけを見出している。
黒猫と朱道にはすでに時間差が出来るほどの実力が離れている。そんな中、朱道は向かってくる黒猫に対して疑問が上がる。
やっぱりこいつは死を受け入れない。やはり生きたいんだ。どうせオレに殺されると分かっていながら抵抗する。何がこいつを支えているっていうんだ。
死んだ後の世界なんて見えるはずない。だと言うのにどうしてこいつの眼には未来がある?
一体こいつはどんな時に自分の死を受け入れるっていうんだ?
思えば疑問はどんどん膨らんでいく。そして膨らむ理由はただ単にシンプルである。その答えを朱道自身が持っていないから。

どうして自分は生きたいのか。
この先をどうしたいのか。
自分の死はどうゆう形であるのか。
この先の未来、自分はどうゆう風になっていないのか。

全てが未回答で跳ね返ってくる。
オレはなんで戦っている?
どうして生きたいと思っている?
どうやって死にたいんだ?一体何になりたいんだ?

……分からない。
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