鳥籠の底は朱い道
昔なら必至に狩りをするため色々と山を徘徊して、そして動物を殺したが、やはり朱道がしたのは“殺す”ではなく“殺し合い”という相違の殺意がある戦い。
だからは今は狩りはしない。よほど血に飢えていない限り。

散歩、トレーニング、散歩、飯、散歩……と詰まらない毎日の中、ようやく待った甲斐があって黒馬は帰ってきた。
山奥の別荘で朱道は黒馬の帰りを待ち望んでいたが、それが黒馬一人だと知ると、ガックリとするしかない。
「なんだ、獲物は見つからなかったんだな」
朱道は一週間ぶりに会った父に対し、あいさつの一言もない。だが、黒馬にとってあいさつよりも今の朱道の言葉の方が期待した言葉。あいさつなどよりも戦いを求める気持ちを持っていればいい、という心情しかない。
「朱道、お前の相手は見つかっているが恐らく簡単に殺される。だからまだ連れて来ない。もっと強くなれば連れてきてやる」
朱道と同じ長めの髪色を持ち、瞳も薄黒の黒馬はうす笑いを浮かべ朱道に言う。
もちろん黒馬の言葉に朱道が納得できる訳がない。
「オレが殺される? そんなもんやってみないと分からないだろ。いいからそいつと殺らせろよ」
言葉こそ悪いが、それは黒馬に対し敵意や殺意は全く存在しない。それが黒馬の今まで培ってきた親としての権力だから。
「まぁそう吠えるな。遠吠えのようで弱く見えるぞ。お前にはまだそいつと戦う資格がない。その内目覚めるだろうが、目覚めない限り殺されるだけだ」
「――っち」
朱道は舌打ちしか出来ず何も言い返せない。それは黒馬の言うとおり、朱雀としての力に目覚めていないから。
今までいかに苦戦した戦いだろうとも、朱道は一度たりとも朱雀の力を使ったことがない。
己が強さのに勝ち残ったことりよりも、黒馬にとって朱雀の力を解放することの方が大事らしい。
けどそれは朱道も分かっている。
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