僕等の恋


『何の用ですか?澤田さん』


嫌味っぽく名字で呼んだあと、しまった、と思ったけど既に遅い。



「ゆーきー…ってあれ、名前覚えてくれてんだあー」

『……』



まったく煩い先輩に目を付けられたもんだ。









雪乃との出会いはもちろんこの大学で。

名前すら知らなかった雪乃とは、お互い初対面だった、はず。


少なくとも俺は。








"高槻湊くんっ"



まだ春の涼しい風が心地よい昼下がり。


窓から吹き込む風になびかれ、イヤホンを耳にあてて寝ていた授業前。



本気で意識が遠のきそうになった時

いきなり耳からイヤホンを外された驚きと、音楽の代わりに入り込んだその声にガバッと体を起こした。
< 19 / 34 >

この作品をシェア

pagetop