僕等の恋
『何の用ですか?澤田さん』
嫌味っぽく名字で呼んだあと、しまった、と思ったけど既に遅い。
「ゆーきー…ってあれ、名前覚えてくれてんだあー」
『……』
まったく煩い先輩に目を付けられたもんだ。
雪乃との出会いはもちろんこの大学で。
名前すら知らなかった雪乃とは、お互い初対面だった、はず。
少なくとも俺は。
"高槻湊くんっ"
まだ春の涼しい風が心地よい昼下がり。
窓から吹き込む風になびかれ、イヤホンを耳にあてて寝ていた授業前。
本気で意識が遠のきそうになった時
いきなり耳からイヤホンを外された驚きと、音楽の代わりに入り込んだその声にガバッと体を起こした。