記憶と。
 家に帰った僕は、特に何をしたかったわけでもなく、何をすればいいのかも解らなかった。
それでもなにか、特別な何かが起きるような嫌な感じは収まらなかった。
しばらく自分のベットで横になっていた。
何をするわけでもなく、天井をずっと見つめていた。
 家に帰って3時間くらいがたった頃だっただろうか。
僕の携帯が鳴った。
電話をかけてきたのは、中学の時に一番仲の良かった健二からだった。
「もしもし・・・?」
「おいヒロ!お前なにやってんだ!」
久しぶりにかけてきた親友の声は、かなり焦った声だった。
「なにって。家にいるけど。」
状況把握の出来ないまま、体を起こし、ベットに腰を掛けた。
「お前高木の事聞いてないのか!?」
「・・・高木?」
何を焦っているのか、それさえ解らなかった。
ただ健二の尋常ではない声が、これから起こることが、僕にとって良い知らせでないのは伝わった。
「高木が病院に運ばれたって!」
「高木・・・?。」
「そうだよ!高木綾子だよ!」
「え?嫌、わけわかんねえよ。」
健二が何を言っているのかが解らなかった。
そして僕は内容を理解出来ていなかったのか、変に冷静に聞いていた。
「いいから早く来い!市民病院だ!」
それだけで電話が切れた。
どういう事なのか理由も解らないまま、彼女の事を思い出しながら、僕は支度を始めた。


 高木綾子、中学1年の時、僕に初めてできた彼女だった。
いま思い出してもありえないくらいに一緒にいた。好きで好きでしょうがなかった、それくらい大好きな子だった。
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