あなたの隣に私はいない。
「好きです。
弘生さんのことずっと好きだったんです。」
目の前には入学してから恋い焦がれてきた先輩。
弘生さんは男バスのキャプテンで1コ上の先輩。
「えっと、ありがとう。」
困った顔をしながら弘生さんが答える。
弘生さんは3年の先輩で、これから受験がまっているので恋愛なんかにうつつを抜かしている暇などないはずだ。
「返事、待ってもらってもいい?」
ちょっと困った顔でそう言う弘生さん。
「わかりました。」
そう平静を装い答える。
きっと待っても答えはNOだろう。
好きな人なら受験そっちのけで付き合いたいと思うだろう。
けれども、好きなら先輩は自分から告白するタイプだ。
───たとえ、部内恋愛が禁止だとしても。
そんなことを考えながらも少し期待してしまう。
私にもチャンスはあるんじゃないかって。
…………弘生さんとの出会いは至って普通だった。