たった一人の甘々王子さま
1 突然の出逢い


ピピピッ――ピピッ――ピピピッ――


前日にセットしたスマホのアラームがなる。


布団から手を伸ばしスマホを探す。


「んーっ、どこだぁ~」


スマホの持ち主はパタパタと右へ左へと手を動かし枕元を探る。


指が軽く触れ、やっとお目当てのモノを顔に近づけることができた。


カーテンの隙間からは、まだ朝日が顔を出す前の明け方が伺われる。


「まだ6時前じゃん......眠いよ....。」


手にしたスマホを枕元に伏せて置き、もう一眠りを......と、布団を頭まで被せたとき――


ブルブルブル――――


バイブ設定のスマホが着信を知らせる。


「チッ、誰だよ......こんな朝早くに....」


画面を見ずにスマホを手にする。


ブルブル―――――


「....はい」


『おはよう、優樹(ユウキ)!まさか、まだ寝てた?今日、1限から講義だけど忘れてないよね?』


電話の向こうから聞こえたのはいつも自分のとなりで元気に笑う幼馴染みの声だった。


「あ――エミ?何?なんかあったか?」


布団から顔を出して答える。


『――わぉ、相変わらずのイケメンボイス......じゃなかった。その様子ならすっかり忘れてるね?先月、小林センセの講義が休講になって、今日に振り替えになったでしょ?』


「.......ん?.........そうだっけ?」


スマホを耳に当てながら欠伸をし、とりあえず上半身を起こす。
長めの前髪が邪魔でかきあげながらそう答える。


『もぅ、やっぱり忘れてる!電話してよかったぁ~ちゃんと起きてよ?今日来ないと単位落とすよ?』


「....あぁ、わかった。エミ、ありがとな。自分ももう起きるよ。じゃ、あとで――」


『うん、学校でね~』


――――ピッ


「よいしょっと―――――」


そんな掛け声で立ち上がり、窓際まで行きカーテンを開ける。


んーっと伸びをして深呼吸。


「今日も一日頑張りますか―――」

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