たった一人の甘々王子さま
教育実習12日目。残りはあと3日。
今日は雨が降っているので、男女ともに体育館で授業の予定。
「よっしーセンセ!今日はみんなでバスケしようよ!」
と、とある女子が叫べば、
「あ、それなら俺バレーがいい!」
なんて元気な男子も叫ぶ。
2クラス合同で男女別れての授業。
場所が体育館と狭いとなると授業内容も限られてくる。
吉野先生もうーんと唸りながら、
「C組もD組も男女別メニューでも構わんのだが、場所がなぁ~。バレーもバスケもコート、一面ずつしかとれんぞ?」
みんなに現状の提示。
あーだのこーだのみんなが騒ぐ。
こういう事は、なかなか決まらないもので........
そんなとき、クラスの女子生徒が質問する。
「ねぇ、優樹ちゃんはどっちが好き?」
突然、選択肢を投げ掛けられて驚く。
「え?自分ですか?......一応、大学ではバスケ部所属ですが........」
答えた優樹の言葉に被さるように、
「吉野センセ!バスケ、バスケにしよう!優樹ちゃんのプレーみたい!」
と、誰かが叫ぶ。
そうなると、みんなも騒ぎ出す。
「オーイ、落ち着け皆の衆!分かったから、じゃあ、今日の授業はバスケにする。
体育委員、隣のクラスに連絡してソッコー準備だぞ?俺も田所先生も先に体育館で待ってるからな?」
「「了解です!」」
委員らしき生徒が元気に返事をする。
「おし、ホームルーム終わり。」
『起立、礼、ありがとうございました!』
吉野先生と一緒に廊下に出ると笹木先生が歩いてきた。
「吉野先生、田所先生、お疲れ様です。」
今朝も元気な同僚、笹木慎太郎。
隣には数学科の松重先生。
「お、次は笹木先生の授業でしたね。宜しくお願いします。」
「はい。お任せください!」
笹木慎太郎がか敬礼して挨拶すれば、
「笹木先生は、生徒と友達になってますがね。ちょっと砕けすぎかと........」
と、バサッと切り落とす松重先生。
『松重センセは手厳しい~』
と、笹木慎太郎はオチャラケ発言しながら教室へ。
松重先生も溜め息が尽きないだろうけど。
「田所先生。今日の授業はあいつらのバスケが最初ですが3限目ですからね。早めにゴール下ろしたり、ボールの確認しておきましょうか?」
「はい。わかりました。今から体育館へ向かいますか?」
「そうですね。書類と鍵をとったら向かいますか。」
「はい。宜しくお願いします。」