たった一人の甘々王子さま
「自分のことより、みんなのこと教えてほしいよ。やっぱり、高校生は彼氏は?どこへデートに行くの?」
今度は優樹が質問攻め。
女子生徒は、『聞いてよ!』って感じで身を乗り出し語り出す。
女の子は、口を聞いて貰いたい生き物なのだろうか?
自分の恋バナから逃れられてひと安心の優樹。
経験はないが、話を聞くくらいならできるだろう。今は、授業なので程ほどに。
チャイムがなり、本日の授業も終了。
「はい。お疲れ様です。体育委員さん、後片付けも、宜しくお願いします。では、」
「「ありがとうございました!」」
「優樹先生、倉庫の扉開けるの手伝ってください。」
「あ、はい。今いきます!」
体育委員に声をかけられて扉の前に着たとき、
「田所先生、今日の昼休み少し時間いいですか?」
と、先ほど一緒にバスケの試合をした遠藤君が声をかけてきた。
「あ、遠藤くん。どうしました?」
「実は、ちょっと相談があるんですけど......時間ありますか?」
「昼休み?お昼食べてから体育科の職員室来てもらえれば......それでも良いかな?」
「はい。ありがとうございます。では、またあとで。」
遠藤くんは許可をもらうと友達のところへ走り去っていった。
「優樹ちゃんも告白されるか?」
道具を倉庫にしまってくれた体育委員が茶化してきた。
「さあ?どうだろうね。遠藤くんは自分よりも可愛らしい女の子がお似合いだと思うよ?」
優樹も本気にはしていない。
「またまたぁ~優樹ちゃん、女子校だったらしいね?告白されることなんて女子生徒からばっかだったでしょ?」
「格好いい先輩って、憧れるもんね!」
二人の女子体育委員に冷やかされる。
優樹もなれていない冷やかしの対応に困る。
「ほら、こんなところで油売ってると、次の授業に遅れるよ?急がないとね。」
「あ、ほんとだ!あと5分?急がなきゃ!」
「優樹ちゃん、またね~!」
『はい、ありがとうね!』
と、手を振り去っていく生徒に優樹も答える。
「さて、鍵を閉めてっと。吉野先生、お待たせしました!準備できました。」
出入口付近で生徒と話している吉野先生に声をかけながら近づく。
「お疲れ様です。では、我々も戻りましょうか?」
体育館の鍵を閉めて、優樹たちも校舎へ戻っていった。