たった一人の甘々王子さま
「んー、早い内に済ませた方がいいかな。川村さんに連絡しとこっと。」
と、焼くだけの状態にしたハンバーグの種をバットにのせて、蓋をして冷蔵庫へ。
携帯を片手にサラダを作る野菜を冷蔵庫から取り出す。
「えっと、川村さん、川村さんっと。」
スマホのアドレス帳を開く。
「あ、あった。『ピッ』」
呼び出し音がなる。
すぐに川村さんが出てくれた。
「こんばんは、川村さん、優樹です。ご無沙汰しています。」
『はい。優樹さんお久しぶりです。お元気でしたか?』
「はい、ありがとうございます。あの、父からの伝言、聞いてますか?」
『はい、伺っております。優樹さんの予定は?』
「えっと、急なんですけど今週の金曜日でも良いですか。」
『承りました。では、金曜日お待ちしております。いつもの役員専用出入り口からお願いします。』
では――――――
と、川村さんとの電話を終える。
「さて、サラダ作ろっと。」
スマホをカウンターに置いて、引き続き晩御飯の料理をする。
サラダが出来上がると、
「あ、お風呂の準備、忘れてた!」
ハンバーグやサラダを冷蔵庫へ。
道具は洗って水切りかごへ。
野菜くずを捨てて、お風呂場へ行く。
優樹の手際も大分、良くなってきた。
「よかった、思い出して。よの主婦は大変だね~これ、毎日なんだもんね。」
お風呂掃除しながら呟く。
今まで全て浩司に任せていたのが申し訳ないくらいだ。
「もっと早く気づいて、手伝ってあげれば良かったな......」
なんて、少しへこむ。
が、お風呂掃除していても、浩司に抱かれたことを思い出す。
洗い場であんなことされて、湯船に浸かっても求められて........
「うっわぁ~何思い出してんの自分。はっ!もしかして、この家で浩司に抱かれてない場所ってないんじゃない?って言うか、思い出しすぎでしょ?恥ずかしい!」
湯沸かしボタンを押して、湯船の蓋を閉じた優樹は両頬を包みながら洗面台の鏡を見た。
「やっぱり、顔真っ赤。最近、一人でいるとなんで浩司との事、思い出しちゃうんだろう。浩司の事、スケベヤローって言えなくなるなぁ......」
電気を消して、キッチンに戻る。
時計を見るともうすぐ8時を指すところだ。
「今夜の浩司も残業コースだな。ハンバーグ、焼いておくか。後でレンジでチンだな。自分は先に食べちゃおっと。」
ハンバーグを焼きながら照り焼きソースを混ぜていく。
本当は一緒に食べたいのに、いつも強がる優樹だった。