たった一人の甘々王子さま
「「「は?」」」
突然の発表で、優樹だけではなく俊樹もエミも驚きの声を出す。
紹介された後、男らしい体型の男性は優樹の方を見て―――
「今晩は、相楽浩司です。宜しく、優樹さん。」
と、優しく挨拶をする。
笑顔が可愛らしく、惹き付けられる。
彼の口から発せられる低音ボイスが優樹の耳に届く。
とても心地よい声だ。
「―――――は?婚約者?誰と誰が?」
テンパって単語しか優樹の口から出てこない。
「相楽君と優樹だよ。」
いたって冷静に父親は話を続ける。
もう、優樹の目は点だ。
「な......なんで?!じ、自分、まだ二十歳だし!大学生だし!」
バン!と、社長机を両手で叩き、前のめりになりながら父親に大声を出す。
「だから、婚約者だと言っているだろう?結婚は大学を卒業してからと考えている。まぁ、お前たち次第で早めても構わないがな。」
父親の態度はあくまでも冷静。その落ち着きがさらに優樹をイラつかせる。
「何で父さんが決めるんだよ!自分はまだそんなこと考えられないよ!!それに、相手の人にも失礼だろ!こんなに格好いい人なら自分みたいな男勝りで言葉だってキツいヤツよりもやっぱり、エミみたいに可愛い女性の方がお似合いだろ?」
息つく暇もないくらい優樹は捲し立てる。
よくもまぁ、噛まずに言えたものだ。
「優樹―――――。」
父親が優樹の目を見て
「もう、決定事項だよ。近々、優樹は相楽君と一緒に生活してもらうからそのつもりで。あと、――――」
「ち、ちょっと―――父さん?」
優樹は父親の言葉を遮る。が、
「優樹、決定事項だよ。何度言えばわかるんだい?今週末、相楽君との新居に優樹の荷物を運ぶ手配をしたから。来週からは新居から大学へ行きなさい。細かいことは相楽君と話し合いなさい。」
『話は以上だよ。では、私は会議だから失礼する――――』
そう言葉を残して社長である父親は部屋を出ていった。
部屋に残されたのは優樹と俊樹とエミ。
と、相楽浩司だ。